2025年7月4日に成立したPublic Law 119-21(IRSが「Working Families Tax Cuts」と呼ぶ税制改正)により、新たな子ども向け資産形成制度「Trump Account」が創設され、内国歳入法にIRC §530Aが追加されました。
制度名だけを見ると政治色の強い印象を受けるかもしれませんが、その中身は「子どもの将来に向けた長期資産形成制度」です。
アメリカで子育てをしている方や、日本企業の駐在員、永住権保持者にとっても知っておきたい制度ですが、日本語で詳しく解説した情報はまだ多くありません。
今回は、制度の概要だけでなく、529プランとの違い、日本人家庭への影響、税務上の注意点まで実務目線で解説します。
Trump Accountとは?
Trump Accountは、内国歳入法(IRC §530A) に基づいて創設された、18歳未満の子どものための新しい資産形成制度です。制度開始時には、親や保護者がForm 4547(Trump Account Election)を提出して口座開設を申請します。$1,000のパイロット拠出を同時に申請しない場合、authorized individualは原則として、子どもの法定後見人、親、成人した兄弟姉妹、祖父母の順に判定されます。
制度開始後は、対象となる子どものために投資口座を開設し、一定の条件を満たす場合には政府による初期拠出(Pilot Program Contribution)の対象となります。
誰が利用できるの?
Trump Accountを開設するためには、主に次の条件を満たす必要があります。
- 18歳未満であること(申請年の年末時点)
- 有効なSocial Security Number(SSN)を保有していること
- まだTrump Accountが開設されていないこと
また、政府による1回限りの1,000ドルのPilot Program Contributionは、一定期間(2025年~2028年生まれなど)の対象児童に限られます。
Form 4547とは?
Trump Accountを利用するには、Form 4547(Trump Account Election)を提出します。
このフォームでは、
- Trump Accountを開設する意思表示
- Pilot Program Contribution(1,000ドル)の申請
- 保護者情報
- 子どもの情報
などをIRSへ届け出ます。
2026年からはIRS Individual Online Accountや専用アプリ経由での電子申請にも対応しています。
529プランとの違い
多くの方が最初に疑問に思うのが、
「529プランと何が違うの?」
という点です。
| 項目 | Trump Account | 529プラン |
|---|---|---|
| 目的 | 子どもの長期資産形成 | 教育資金 |
| 初期政府拠出 | 対象者は1,000ドル | なし |
| 年間拠出 | 法定上限あり(インフレ調整あり) | 州・プランごとに高い上限 |
| 運用 | 一定の指数連動型ファンド等 | 幅広い投資メニュー |
| 税制 | 税繰延べで運用、18歳以降は原則Traditional IRAルールに近い扱い | 適格教育費なら利益も非課税 |
最大の違いは、529プランが教育費を主目的とするのに対し、Trump Accountは子どもの長期的・退職目的の資産形成を支援するTraditional IRA型の制度である点です。ただし、将来の引出しにはTraditional IRAの課税・早期分配ルールが適用されます。
日本人家庭は利用できる?
ここは多くの方が気になるポイントです。
利用できるかどうかは国籍ではなく、制度上の要件を満たすかどうかで判断されます。
例えば、
- 米国生まれでSSNを持つ子ども
- 永住権保持者の子ども
- 就労可能なSSNを持つ一定の子ども
などは対象となる可能性があります。一方で、ITINしか持っていない場合や、就労に有効なSSN要件を満たさない場合は対象外となる可能性があります。最新の要件は必ずIRSの説明を確認してください。
日本企業の駐在員はどう考えるべき?
日系企業の駐在員家庭では、
- 子どもが米国生まれ
- SSNを取得済み
- 数年後には日本へ帰任予定
というケースも珍しくありません。
このような場合、
- 帰任後も口座を維持できるのか
- 日本帰国後の管理はどうするのか
- 日本の税制との関係はどうなるのか
など、現時点では実務上まだ整理が必要な論点があります。
特に将来日本へ帰国する予定がある家庭では、制度のメリットだけでなく、帰国後の管理や税務も含めて検討することが重要です。
贈与税(Gift Tax)は大丈夫?
親や祖父母など個人がTrump Accountへ拠出する場合、その拠出は子どもへの贈与として扱われる可能性があります。
IRSはRevenue Procedure 2026-25により、一定の要件をすべて満たす個人拠出について、贈与税の年間非課税枠の対象となる現在利益の贈与として扱い、Form 709の提出を不要とするsafe harborを設けています。
ただし、単に拠出額が年間非課税枠以下であるだけでは、必ずForm 709が不要になるとは限りません。Safe harborのすべての要件を満たさない場合や、他の贈与、夫婦間のgift splitting、GST税の割当てなどがある場合には、Form 709の提出が必要になる可能性があります。
私が注目しているポイント
私が特に注目しているのは、この制度が長期的な資産形成の入口になることです。
子どもが生まれた時点で投資を始められるため、18年間という長い時間を味方につけられます。
一方で、
- 529プラン
- Custodial Account(UGMA/UTMA)
- Roth IRA(将来)
- Trump Account
といった制度をどう組み合わせるかは、各家庭の教育方針やライフプランによって異なります。
「政府から1,000ドルもらえるから作る」というだけでなく、家族全体の資産形成の中でどう位置付けるかを考えることが大切だと思います。
まとめ
Trump Accountは、アメリカの子ども向け資産形成制度として新たに始まった制度です。
特に、
- アメリカで子育てをしている家庭
- 日本企業の駐在員
- 永住権保持者
- 国際結婚家庭
にとっては、今後知っておくべき制度の一つになるでしょう。
制度は始まったばかりで、IRSや財務省からもFAQや運用ガイダンスが随時更新されています。
私も今後、新しい情報が公表され次第、実務的な視点から継続的にアップデートしていきたいと思います。

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